7月12日付け日本経済新聞朝刊5面に「財政次への課題(中)社会保障、空白の8800億円――歳出改革へ削減欠かせず」の記事。
記事は、社会保障費の削減に反対していた自民党の厚生労働族議員の一人が6月中旬に骨太の方針の説明に訪れた厚労省幹部に対して「この内容なら、何の問題もない。よくやってくれた」とねぎらったとし、族議員が「評価」したのは、高齢者の自己負担の見直しなど、自民党内で検討していた追加的な医療費削減策の明記が見送られたことと伝える。背景には来年夏の参院選を控え、与党が自己負担増を伴う改革案に及び腰になったことがあるとのこと。骨太に盛り込んだ社会保障分野の歳出改革は、5年間に国の一般会計ベースで1兆1千億円抑制する内容で、平均すれば23年度まで毎年2200億円程度の歳出カットの継続が必要となるが、厚労省が関心を寄せるのは、来年度予算の概算要求基準(シーリング)に向け体裁をどう整えるかだけで、来年度分の2200億円分に限ると、ハードルはそう高くないとか。歳出カットの柱は景気回復で財政が好転している雇用保険事業で、来年度に約1千億円の国庫負担の削減を見込め、これに生活保護費の伸びの抑制などを加えることで2200億円は達成が可能とのこと。来年度以降の残りの8800億円の削減をどう達成するかについてはいたって冷淡で、骨太にも詳細は盛り込まれておらず、厚労省幹部は「次の政権が判断すること」と、事実上白紙との認識を示すとか。そこには参院選などの政治日程の中で、社会保障費削減の圧力が弱まるとの期待もあると記事は評する。厚労省からは逆に、少子化対策の名目で歳出削減圧力をかわそうとする動きも出てきており、厚労省が旗振り役をつとめた雇用保険財源の少子化対策への流用がその一つだが、
小泉純一郎首相が「少子化対策なら反対しないだろうと思って、お金をかかえこむ典型的な官の発想だ」と批判していったん立ち消えになったものの、厚労省幹部は「首相が交代すれば復活する」とうそぶくと記事は伝える。仮に年末の予算編成で流用が認められれば、雇用保険の国庫負担の削減額が減り、今度は2200億円の達成が難しくなるが、すべては次期政権次第というのが厚労省のスタンスとか。