5月26日付け日経金融新聞2面に「財政に思わぬ“援軍”法人税――短期楽観も油断は禁物(ポジション)」〔編集委員 滝田洋一〕の記事。
記事は、自民党税制調査会が19年度税制改正で、消費税の税率引き上げを見送る公算が大きくなっているが、債券市場は意外に冷静で、その背景として、税収増があると伝える。62年度まで見渡した日銀内部の試算「わが国財政の長期見通し」によると、歳入の名目国内総生産(GDP)比は、16年度の29.4%が、23年度に32.4%へと、構造改革と経済財政の中期展望(改革と展望)の予測より2.8ポイントも大きくなるとのこと。背景は税収増で、名目GDPが1伸びた際に税収がどれだけ増えるかを示す弾性値は、18年度には3.85、19年度も2.63にのぼる見込みとか。これは、法人税収増が効いており、上場企業が過去最高益を更新する中で、赤字企業が減り、
黒字企業が増えていて、黒字企業の税引き前利益総額に対する赤字企業の損失総額の比率が、8年度までの平均である20%に低下すると前提に立ち、課税対象となる
黒字企業の利益総額が18年度から22年度までに年平均5%増加すると予測しているとか。もうひとつ。黒字企業の課税を少なくしていた
繰越欠損金も、17年度以降減少しつつあり、課税対象となる企業所得は、22年度にかけて年率7%で増える見通しとか。まだ満足に法人税を払っていない
金融法人も税金を納め出すことも考慮すると、22年度の法人関連税収はバブル期の8割にのぼる見込みとのこと。法人部門の回復が追い風となるので、消費税率の引き上げなしで、2010年代初頭にかけて名目GDP比で3ポイント程度の歳入増加が実現できそうで、こうした歳入増により、一般政府の基礎的財政収支は、16年度の名目GDP比4.3%の赤字が23年度には0.2%の赤字とほぼ均衡化するとのこと。一般政府から社会保障基金を除いた国と地方の基礎的収支は20年度には0.3%の黒字に転じる見込みで、黒字達成時期は「改革と展望」より3年も早いとか。以上の試算を、日銀は担当者の「個人的見解」と断っており、分析は幅を持ってみる必要があるが、それでも、消費税を引き上げなくても財政が直ちに破綻することはなさそうで、経営者や投資家はホッと一息だろうと記事は評する。事実、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは日本国債の格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げているとか。もっとも、それは比較的短期の話で、高齢化に伴って医療費や介護給付金を中心に歳出が増えるため、長期のシナリオは決して楽観を許さず、一般政府の
基礎的収支は23年度以降悪化し、37年度には1.4%の赤字となり、37年度以降はさらに大変で、62年度には基礎的収支の赤字は8.9%にも達する見通しとか。新顔の50年国債に投資家は二の足を踏みかねないと記事は評する。かくて
短期楽観、長期悲観の未来図が導き出され、最善の対応策は、短期の税収増に気を緩ますことなく、医療、介護などの歳出抑制に力を注ぐことであり、小泉後継政権にその覚悟があれば、金融市場は歓迎するが、半面で、税収増をばら撒きにつかうようだと、文字通り日本沈没となると記事は伝える。