7月16日付け日本経済新聞朝刊2面の社説「経済が証明した、ばらまき財政の無用」は、小泉政権で5回目となる年次経済財政報告(経済財政白書)について「小さな政府」のメリットを説いているとし、歳出の削減を進めなければ増税に理解を得られないという配慮も働いているのだろうが、1990年代に政府の規模を膨らませた公共事業の大盤振る舞いなど「ばらまき財政」が無用だったことは、現政権下での景気回復が証明していると評する。社説は、小泉純一郎首相が就任した翌年の14年初めから景気回復は始まり、
回復の主因は米国や中国の好況に伴う輸出の増加だが、企業の経営改革と公的資金を使った不良債権の処理による、
雇用・設備・債務の「三つの過剰」の解消、さらには
規制緩和による事業機会の拡大や公共料金引き下げも回復に貢献したと解説する。国の歳出の4割を国債発行に頼っている現状を考えれば、財政がなお景気を下支えしているのは疑いないが、
小泉政権は公共事業を削減し続け、小渕恵三元首相や森喜朗前首相らの財政拡張策からはっきり転換してきており、それが、企業経営者に経営改革を急がせた面もあるとする。金融再生では、単純合算で40兆円を上回る公的資金をつぎ込んだが、これは経済の心臓部である金融の機能不全を避けるための緊急措置であり、ばらまき財政と同列には論じられないとし、不良債権問題を早く片づけたのは正しかったと評している。社説は、日本経済がデフレから脱却していないうえ、原油高騰が企業収益の圧迫などを通じ景気悪化を招く恐れもあるのは白書のいう通りであるとし、景気が悪化しても公共事業を増やす余裕が小さく、その効果も疑問とあれば、今後も公共事業に頼らず、規制改革や官業の民間開放などを経済活性化策の柱に据えるしかないと説いている。